River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

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ふゆのゆうぐれ


褪せた青の空は、黄がかった裾を裸の木々の上に投げかけている。
灰色の雲がところどころ朱色にきらめきながら、歩くような速度《アンダンテ》で北へと流れていった。
明るさを空に吸い取られた地上は全て影に覆われ冷たくなり、人の営みは明かりを灯してささやかな温かさを主張する。
硝子が氷の膜になり、昼の熱を奪っていく。
氷の夜がやってくる。


雲が光らなくなった。
空の青には夜の黒がにじみ出している。
微かに残る混じり合った色合いが、束の間の黄昏を演出する。
天の星に先んじて人工の明かりが存在感を増し、人も虫も其処に集う。
鴉が足早に帰って行く。
夕暮れが終わる。


重たい夜が幕を下ろした。
暗くなった世界に、ひとがもう一度明かりをともす。

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夏は夜

<オリジナル現代語訳>


夏は、夜が一番だ。

月が綺麗なら、なおさらだが。

闇夜に、たくさんの蛍が光って飛び交う様子といったら!

それから、一、二匹だけ、幽かに光っていくのもいいし。

雨が降っているのだって、夏らしくていいものだ。








夏は夜 月の頃はさらなり 闇もなほ 蛍の多く飛び違ひたる またただ一つ二つなどほのかにうち光りて行くもをかし 雨など降るもをかし



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風の車

夢を見た。



私は家族に会いに行くために薄緑色の指定席切符を握りしめて列車に乗った。
乳白色に近い肌色の車体には、柔らかな若草色のラインが一本走っている。
窓際に自分の席を見つけて、私は躰を座席に埋めた。
意外にもしっかりとしたクッションが、柔らかく私の躰を受け止めた。
その感触を堪能して、ゆっくりと全身の力を抜いた。




プラットホームには、一台の汽車が停まって居る。
くすんだ赤色の、玩具のような車体は、黄色の線で飾られて居た。
汽車に乗り込んで居るのは、五人の少年少女と一人の幼児であった。
同じ髪色、同じ目の色で、何処か面差しの似通った兄弟姉妹のような六人は、一人が先頭車両で運転席に立ち、後の四人はその次の車両に一緒に座り、幼い一人は年嵩の少女に抱えられて座っていた。
最も年長であるらしい少年は、先頭車両で内部だけは機械化された外見はまるきり汽車の電車を、くすんだ赤の釦を二つ人差し指と中指で押すことで動かした。
ゆっくりと動き出した列車は、長い体をくねらせて緩やかな曲がりを辿っていく。
ガタゴトと走るその列車の何が気に入らないのか、小さな坊やが姉やの腕の中でぐずりだした。
いやだいやだと言って聞かない。兄姉達の取りなしも聞かない。
とうとう、煙を細長くはき出しながら停車した駅で、列車からぽいと飛び出してしまった。
運転席の少年は困った。
坊やを置いていく訳にもいかない。しかし、列車を動かさないでもいられないのだ。
何かに急き立てられるような恐ろしさが、少年の胸に去来した。
ひたひたと足の先からまるで石になったかのような冷たい硬さに蝕まれていく。
得体の知れないものに押されるようにして、少年は二本の細い指を揃えて赤い釦を押した。
電車はゆっくりと動き出した。坊やをおいたまま。
次第に小さくなる灰色のプラットフォームとその上の緑の服を着た坊や。
弟妹達は当然兄を責めた。何故出発したのかと。
少年は答えられなかった。指が釦を押してしまったのだ。
押している間だけ、電車が動く、二つの釦。
もはや少年には耐えられなかった。弟妹達の責め句にも自らの中に湧く罪悪感にも。
少年は、震える指をそっと、釦から離した――。





はた、と気付いた。
列車は動き出していた。薄い駱駝色の車内は窓からの日光に照らされて暖かい。
私はざわりと不快な何かを感じた。私の内に、私を急かすものがあった。何か。強迫観念。

この列車に乗っていてはいけない。

私は立ち上がり、狭い通路をもどかしく走った。先頭には車掌が居る筈だ。
しかし其処まで行く必要は無かった。二両分程進んだところで群青の制服を着込んだ車掌と鉢合わせた。
私は事情を説明した。私はこれに乗っていてはいけないのです。今すぐに降りなければ。
車掌はまじめくさった顔をして一つ深々と肯き、横の扉に手をかけた。緊急用と書かれた引き戸をまるで軽々とからりと開けると、列車の速さはまだそれほど上がっていないのだろうか、ごうごうと音だけは激しい風の塊が車内に侵入してきた。しかし全くそれには頓着せず、制服の裾をはためかせ、車掌はふわりと外へ身を躍らせた。私も後を追ってごうごうと唸る風の中に身を投げ出す。
激しい音と対照的な柔らかな風が私の体をやんわりと包み、私は先に降り立った車掌の横に同じようにふんわりと着地した。
その私たちの横をごうっと風と叫びを残して列車が過ぎ去っていった。途端にごうごうという音が消え、やわらかな風が囁きを残して私たちを吹き過ぎる。
唸っていたのは風ではなく列車だったらしいと分かって、なるほどと頷いた。
私は車掌に深々と礼をすると、遠くで音が鳴り止んだ踏切を目指して歩いていく車掌とは反対方向、列車が消えていった方向へ向かって走り出した。
線路は小高く造られていて、その向こう側が見えない。向こうへ渡れるところを探しながら懸命に走ると、草の生えた延々と続く小高い丘にぽっかりと黒い口を開けるトンネルが見えた。
ひょうと笑う風に押されながら右に曲がって其処をくぐり抜けると、右手に坂があった。
ここだと思ってさっきまでとは逆行するように坂を登る。
100メートルほども余計に走っているような気がして向かっ腹が立つが、しかし反対からは登り口がないから仕方がない。
何に急かされているのかは分からないが、おくれてしまったと感じていた。
坂を登り切ると、其処は高速道路の入り口だった。丸いゲートの屋根が見える。
その手前には、縁石に腰掛けた父と、車の前に立つ弟が立っていた。こちらをみて、にやにや笑っている。

「遅かったな。どうせお前は眠っていたんだろう」

それは今もだ、と私の口が言った。

そこで、目が醒めた。

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きっかけ

ちょっとウザイくらい後ろ向きかも知れない内容です。
私が小説かいたり詩を書いたりして、このサイトを持つに至ったきっかけ。
今まさにぐるんぐるん悩む心の嵐のただ中にいるあなたに捧ぐ。


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明日の準備

とうとう明日だ。
指輪だって用意したし、デートプランも完璧。
夕方5時に駅前で待ち合わせ。
あそこは最初にデートしたときからのお決まりの場所だから、会えないとかってことはないだろう。
彼女はちょっと早めに来たりするから、一応30分前には待ってるようにしないとな。
軽くウィンドウショッピングをしながら予約したレストランへ行く。
あそこは去年の彼女の誕生日で行ったときに、おいしいって喜んでまた来たいっていってたから、じゃあ来年も誕生日はここにしようって約束したんだよな。
窓際の席を予約できたし、話でまずったことを言わなきゃ大丈夫。
で、食事を終えたら近くにある公園に行く。
川面に映るビル街の夜景が綺麗らしいから、きっと彼女も気に入ってくれるだろう。
そして・・・雰囲気が良くなったところで、この指輪を渡すんだ。
文句だって決めてある。あんまり捻ったこというのも恥ずかしいし、普通に、「僕と結婚して下さい」、だ。
ああ、緊張するなぁ。
兄貴もプロポーズするときは緊張したんだろうか・・・いや、兄貴はしなさそうだな。
大丈夫だ。
義姉さんにも相談に乗って貰って、太鼓判を貰ったじゃないか。
うう、緊張しいの自分が情けない・・・。
こんな調子で明日大丈夫かなぁ・・・。
・・・
いや、大丈夫だ!
何度も確認したじゃないか、服もコースも!
彼女だってまさか断りはしないさ、いい感じだもんな。
うん、大丈夫。
よし、明日の準備完璧!
早く寝ちまおうっと。
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微病弱・酒煙草苦手・甘味党・文系新米教師。
日常的に脳みその中で言葉をこねくり回しています。

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