River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

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友人は宇宙人 3

宗教の勧誘、って受けたことがあるだろうか。大学に通っていると、その周辺で新興宗教の勧誘に出逢うことも少なくない。
そういうのって大抵金をむしり取るようなタイプの奴らなので、僕は「浄土宗です」といって断ることにしている。(嘘じゃない。だって先祖代々の墓があるのは浄土宗の寺だ)
結構「信じ込んじゃってる人」っていうのは違う世界に生きてるんじゃないかってくらい価値観が違うことが多いので、会話するのも避ける。
けれど、あいつのはちょっと怖かった。

たまに互いの部屋で呑むことがある。その時は、贔屓にしているお笑い番組のDVDを見るって名目で、飲み会をやった。
あいつも結構のんでたので、ちょっと酔ってたと思う。
ぴんぽん、とチャイムが鳴らされ、家主のあいつが応対に出た。ワンルームなので玄関の様子も丸わかりだ。
僕はビールを傾けながら、DVDの感想をもうひとりの友人に語られていた。ふと耳に入ったのは、女性の声。
「・・・信じれば・・・救われます・・・」
よく来る宗教の勧誘か、と思ってもうひとりをつつき、注意を向けさせた。あいつがどう断るのかちょっと興味がある。
「救われたいとは思いません」
きっぱりとした声が聞こえた。
「世界が滅ぶというのは人間が滅ぶということと同義では無いでしょう。人間が滅んでも地球は残るでしょうから。」
多分勧誘のおばちゃんは絶句している。あーあ、可哀相に。あいつの「宇宙人」なところがでちゃったから・・・。
「地球にしてみれば、人間が滅んでくれたほうがいいくらいでしょう。人間がいるから地球環境は悪くなるし、宇宙にデブリは増えるし、戦争だのなんだので破壊ばかり。他の動物と違って採取したものを還元することもない。」
「それは、植樹とか動物保護とか・・・」
「気休めにしかなりません、人間の消費する量に比べたらね。動物保護なんて、少なくしたのはそもそも人間でしょう」
立て板に水。ちょっとどころじゃなく酔ってるかもしれない。なんてタチの悪い酔い方をするんだ、あいつは。でもちょっと面白い。
「そもそも人間という生き物は、何かに迷惑を掛けないと生きていけない。しかもそれを反省しない。繰り返す。
そんな生き物、滅んでしまった方が他の、人間なんかよりずっとたくさんの生き物たちのためだ」
いかにも傲慢そうな感じに言い放った。僕らは小さく笑う。おばちゃんのヒステリックな声が聞こえてきた。
「あ、あなたは、自分が死んでも良いというのですか!?」
「構いませんよ」
すごいことを言っている、と思った。勧誘が鬱陶しいからといってそこまで言うか。
「自分が生き残る理由がありませんから。僕は自分が、不可抗力で死ぬことを望んでいるんです」
世界が今すぐ滅んでくれるのなら、僕が死んだと言って悲しんだり迷惑を被ったりする人もいないでしょうからね。万々歳ですよ。
そんな壮大な自殺願望を語って勧誘を追い払ったあいつは、戻ってくると泡の消えかけたビールに手をつけた。僕らが聞いていたと思っていないのか、先程の話には全く触れてこない。
「なあ、今のってまさかマジじゃないよな?」
まさかなあ、と思いつつも、僕は否定しきれなかった。なにしろ「宇宙人」だ。計り知れない思考の持ち主。
聞いてたんだ?と笑ったあいつは、しれっとした顔で、薄ら寒いことをこともなげに言った。


「もちろん、全部本気さ」


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友人は宇宙人 2

思考回路が理解不能。そんなヤツのことを、きみはなんて呼ぶ?「宇宙人かよ」って思わないか?
僕の友人は、まさにその「宇宙人」だった。あいつの思考回路はまったく常人には理解不能だ。
普段はノリのいい普通の人間のフリをしてるが、その実、めちゃくちゃおかしい脳みそを持っている。


心理系の授業の後、だったと思う。友人数人と食堂で昼食を食べている最中、あいつがぽつりと聞いてきた。
「自己肯定、ってなんだろうな?」
僕は最初、うまく漢字に直せなくて、こうていって何?と間抜けなことを聞いてしまった。
否定肯定の肯定、といわれて、あいつが自己否定自己肯定のことを聞いているとわかった。
「自分を肯定するってことだろ」
とあいつの隣に座ったヤツがコロッケをくわえながら言った。そのまんまだな。
「言葉の意味はわかるけどさ。それがどういう心情なのか、いまいち分からない。」
あいつは自分のロールキャベツを箸で突ついている。眉間に皺が寄ってるぞ。
「う~ん。自分はできるっていう、根拠のある自信をもつこと、とか」
「難しいよなあ。自分に自信があるとかじゃねえの。」
「自分が今いる立場を理解して、先を考えられること、とか?」
いいんじゃねえ?そんな感じそんな感じ、と同意があつまったところで、あいつが更に重たい疑問を持ってきた。
「じゃあ、今『いる』理由・・・生きている理由ってなんだ?」
僕らは顔を見合わせた。素っ頓狂なクエスチョンを持ち出してきた本人は、至って真剣らしい。つつきまくったロールキャベツはすでにキャベツとミンチだ。
生きている理由、といわれても、そんなこと考えたこともない。僕は逆に、おまえはどうなんだ、と聞き返してしまった。
あいつが宇宙人だ、ということをすっかり忘れていた。聞いたことを後悔したのは答えを聞いた後だ。
「死ぬ理由がないから」
あいつはばらばらのロールキャベツをもそもそと口に運びながら言った。代わりに、全員の箸が止まる。
「生きているのも迷惑かけるが、死んでも迷惑かけるし。惰性?」
こともなげに言ったあいつに、果敢にも僕の隣から反論が出た。
「おまえ、教師になりたいって言ってたジャンか。それは生きる理由じゃないのかよ?」
「ちょっと違う。迷惑掛けっぱなしなのは心苦しい。だから何か誰かの役に立ちたい。頭脳労働専門の自分にできることで、一番分かりやすく人のためになること、が教師だっただけだ」
ごちそうさま、と手をあわせて、図書館にいくから、と先に席をたった。立つ鳥、後を濁しまくっていきやがったな。
まったく何を考えているのか。自殺願望があるわけでもなく、将来の夢もある。その夢を、叶えられるだけの能力もある。なのに、何が不満なんだろう?
呆気にとられていた友人達の、なんなんだあいつ、超へんなやつ、あんな根暗だったっけ、と言う会話に、僕はため息と共に呟いた。


「たぶん、別の次元にいるんだろ」

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友人は宇宙人 1


僕の友人の話をしよう。
あいつとは大学に入ってから知り合った。結構ノリのいいやつで、話していても面白かった。学部が同じ事もあって、よくつるんでいた。
僕は自分がごくごく普通の一般人だと自覚している。特に飛び抜けた能力があるわけでも、極端に変な性格をしているわけでも無い。
親しい友人でもなければ、同じクラスの同級生でも、卒業後に顔と名前を覚えているか怪しいくらいのものだろう。
けれど、あいつは違った。

ある日、学内のオープンスペースで話をしていたときのことだ。
そこは学生がよく暇な時間にたむろするところで、喫煙スペースとしてベランダが付いていた。
その日は天気も良かったので、煙草を吸うわけでもなく外に出た。ベランダの手すりに持たれて、下を通る人をぼんやり見ながら、話をしていた。
何を話していたかは覚えていない。多分、他愛もないこと・・・その日の授業の内容だとか、教授のうわさ話だとか、そんな事だったんじゃないかと思う。
突然、あいつが聞いた。
「なあ、ここって何メートルぐらいだろうな」
「何が?」
僕は聞き返した。何について言っているのか、全く脈絡がなかったのだ。あいつは「高さ。二階だし・・・3メートルくらいか?」と、じっと地上を見ながら言った。
僕も改めて下を見る。それなりに高さはある。そんなに大きくはない木ぐらいだろうか。
「そうだね。そんくらいじゃないかな」
だからなんだ、とあいつを振り向くと、足が見えた。今さっきまでもたれていた手すりの上によじ登ったのだ、と理解した時には、あいつは下に飛び降りていた。
「っおい!」
きゃあ、と悲鳴。授業の合間でもなく、それほど人通りがなかったのも幸いだった。
あいつはしっかりと無事に、着地していた。しゃがみ込んだまましばらくじっとしていたが、ゆっくり立ち上がり僕の方を見上げると、「悪いけど、荷物もってきてくんない?」と、いつもと変わらぬ調子で言った。
大急ぎで中にとって返し、テーブルに放り出してあった2人分の鞄をひっつかむと、階段を二段とばしで降りた。
おそらく僕は顔面蒼白になっていただろう。肝を冷やすってこういうことなのか、と後で思い返して納得したものだ。
あいつのところに着いたとき、あいつはぼんやりと空を見上げていた。
いつもぼんやりしていることの多いヤツだが、その時はそのぼんやりした、感情の読めない表情が怖ろしく、また腹立たしかった。
さんきゅ、と振り向いていったのがあんまりにもいつも通りだったので、僕は逆上した。
「何考えてんだよ!馬鹿かお前は!」
普段僕は怒鳴るようなことをしない。目立つのは苦手だし、誰かに対して怒りを感じたのも、久しぶりだった。
けれどあいつは、飄々とした態度のまま、「実験」と一言いった。
「二階からじゃ、やっぱ飛び降りても死ねないな」
その落ち着き払った口調に、僕は心底ゾッとした。
死んだらどうするんだとか、怪我するだろとか、そんな言葉すら出て来ない。喉が渇いて貼り付いたみたいに感じられた。
「じゃあ、これからバイトだから」
また明日な、といつも通りの調子で手を振って、あいつは鞄を持って歩いていった。
ひとり取り残された僕は、その背中をみて思った。

「あいつは、宇宙人だ」


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暗い、くらい、Cry

こわい、こわい。
ひとり、泣く夜。

だれも助けてなど、くれない。
その恐怖は、自分がそだてたもの。

誰もがもつ、恐怖の種。
私のだけが、花をつけた。

くらいくらい色の、恐怖の花。
それはわたしの、胸に根を張り。
心を、食い荒らす。

逃げ場はない、みつからない。
たすけてと、よぶことさえも許されない。

声をころして、ひとり泣く夜。
自分のこころも、いっしょにころした。



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Author:裕
微病弱・酒煙草苦手・甘味党・文系新米教師。
日常的に脳みその中で言葉をこねくり回しています。

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