River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

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嵐の龍

窓の外から聞こえる音で、目が覚めた。
空は明るい灰色で、白いまっすぐの雨が、いっぱいぴゅんぴゅんふっている。
強い風のせいで、雨はななめになっている。
ごうごうとすごい音がしている。ときどきどぉんと雷が落ちる。
もう、ねむくなかった。
母さんは買い物に行ったんだろう。
時間は四時。おやつの後で、寝てしまったみたいだ。

もうすぐかえってくるかな、まだ時間かかるかな。
こんなに雨がふってたら、母さんかえって来れないんじゃないかな。
だいじょうぶかな。
雨、やめばいいのにな。

ひとりで留守番も、もう小学生だから平気。
でも、まだ四時なのに外が暗くって、やっぱりちょっと、こわい。

ぴかっ、と光って、があん、とすごい音がした。
雷、近くに落ちたみたいだ。

「雨、雨、やめ、やめ。かあさんが。かいもの行ってて、かえれない」

小さく、歌詞をかえた歌を歌う。
替え歌は、学校で流行っている遊びだったけれど、あんまりやったことはなかった。
だって、からかったり、いじめたりするのにばっかり使うんだもん。
けど、やってみると楽しい。こわいのが、ちょっとこわくなくなった。

「雨雨、やめやめ、かあさんが。かいもの行って、かえれない」

早くやめばいいのにな。そうすれば、母さん帰ってこれるのに。
母さんが、台風の真ん中は、台風の目、て言って、雨も風も無いって言ってた。
それでもいいな。ちょっとでいいからやまないかな。
そう思って、三回目をうたった。

「雨雨やめやめ、かあさんが、買いもの行って、かえれない!」

そのとたん、ぱっと外が明るくなった。
本当に、台風の目に入ったのかな。
びっくりして、急いでベランダに出て見上げると、雲は灰色のままだけれど、そのすき間から空が見えて、光の棒が何本も、雲から突き出ていた。
一番大きなすきまは、まん丸で。

そこに、空よりずっと、あおいものが見えた。

最初は飛行機かなと思った。
けれど、飛行機はあんなにぐにゃぐにゃしてない。
次に、こいのぼりかなと思った。
けれど、こいのぼりはあんなに長くない。
最後に、大きな鳥かなと思った。
けれど、鳥なら羽があるはずなのに、あれにはない。


あおくて、ぐにゃぐにゃ動いて、長くて、翼のないもの。
それで、おっきくて、空が飛べるもの。

きれいなあお。
もっと見たくて、じいっと見たら、蛇や魚みたいな、ウロコが見えた。

(龍だ)

お話の中で見た。雨をふらせるイキモノ。
長い体で、翼もないのに空を飛んで。嵐の真ん中に棲んでいる、イキモノ。

あんなにきれいなイキモノなのかと、ぽかんと口を開けたまんまで見上げていた。
嵐の真ん中、というのは、台風の目のことだったのかと思った。
顔が見たいと思ったけど、雲の丸いすきまの中にいる龍は、おなかしか見えない。
おなかはだんだん細くなって、最後は筆みたいな形のしっぽを、ひらっとさせて、あおい龍は見えなくなった。

「いっちゃった」

残念、と思った。もっと見ていたかった。
しかたないから部屋に戻って、窓を閉めた。

ざあっ

雨の音が戻ってきた。
光の棒も、雲のすきまも、無かった。
雨の線と、風の音と、雷と。それだけしかなかった。

「あれぇ?」

台風の目、どこかに行っちゃった。
龍といっしょに、遠くへ行っちゃった。

「ただいま」

「おかあさあん、今ねぇ、台風の目に龍がいたよぉ」

すごいや、台風の目は、龍とお母さん連れてきた!





小学生のお留守番。文章も子どもっぽくしてみました。
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日常的に脳みその中で言葉をこねくり回しています。

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