River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

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光の魚

悪夢をもとに作ったので、少々グロテスクかつホラーなお話です。
ので、苦手な人は避けて下さい。









そこは、真っ暗な洞窟だった。

光源らしきものは見当たらない。しかし、周囲の様子がわかる程度には明るかった。
大人が立てば、楽に天井に手が届くほどの高さで、横は3人横に並ぶことがやっと出来る程度の幅だった。
背後には先の見えない闇が迫り、眼前には水面が揺れていた。
立っている岩場には、ペットボトルや木の板などの漂着物がある。水はどこからか流れてきているのだとわかった。

だが、ここは何処か。それが全くわからない。

自分以外の生き物のす型は見られない。
だが、「なにか」に見られているような、そんな薄気味悪さがあった。

一歩前に出ると、すぐに水際だった。
淡く洞窟内を照らす光は、水の中から来ているようだ。

中をそっと覗くと、奥の方に白のかたまりが見えた。
悠然と泳ぐ鯉のような姿。否、もっと長い身体をしている。
もっとよく見ようと身を乗り出した途端、それが猛スピードで向かってきた。
咄嗟に身を引いたが、ほぼ垂直に水面を破った白は目の前をかすめて、また水中に戻っていった。

光を発していたのは、その白い生き物だ。
水から出たときに、まざまざと見えたその姿に、鳥肌が立った。
姿は短い四つ足の爬虫類だったが、ずらりと牙の並んだ口は明らかに肉食生物のもの。
そしてその光を放つ皮膚は、白く半透明で、うっすらと内部が透けて見えた。
目のようなものは無いが、明らかにこちらに害意を向けている。見られていると感じたのは、この生き物からの「視線」だった。

あまりのおぞましさに、水際から退がる。
しかし、その白い水棲生物は、再び水上に姿を現し、こちらに向けてばくりと大口を開いてきた。
全長は1メートルもあるだろうか。巨大な生き物だった。

この生き物に声があったならば、怖ろしい叫びを放っていただろう。
それがないことは、不幸中の幸いかも知れない。
少なくとも、耳を塞ぐ必要はなかった。

とっさに足下にあった石を投げつけると、それは空中で向きを変え、再び水底へと潜った。
一度は退いたものの、再び襲ってくることは目に見えている。
落ちている漂着物から武器になりそうなものを探すと、水際に一本のナイフがあった。
果物ナイフだろうか、頼りない大きさの得物だが、他に手頃なものは見当たらない。
素速くナイフを手に取ろうとしたとき、眼前に白い影が泳ぎよるのが見えた。
ナイフより近く、すぐ右側にあった板を両手で掴み、力一杯水面にたたきつける。
水にたたきつけた以外の手応え。そして、がっという鈍い音。
反射的な行動ではあったが、うまく飛び上がろうとした生物の頭を叩いたようだった。
その隙に、ナイフを持って洞窟の奥へさがる。

姿からして、陸上での運動能力が水中と同等とは考えにくい。
陸に上がって動きが鈍くなったところを狙うしか、勝ち目はないだろう。
ごくりと喉を鳴らす。
勝つ自信など無かった。しかし、負ければ喰われるだろうことは嫌でもわかった。
全身が震えるが、それが武者震いなのか、純然たる恐怖から来ているのかは、自分でもわからなかった。
水面近くには、白は見えない。水の中に潜っているようだった。

次の瞬間。水面が爆ぜた。
生物はぬらぬらと光る体を、岩場の上でバウンドさせながら陸に上がってきた。
先程叩いた頭は幾分凹んでいるようにも見える。
乱ぐいに牙が並ぶ口からは、だらだらと涎が垂れ流されていた。
シュアシュアと微かな呼吸音を立てながら、その怪物はじりじりと向かってくる。

威嚇のために足下の石を蹴ったが、見当違いの方へ転がってしまった。
しかし、怪物はその石を追って首をめぐらせた。
目のないそいつは、どうやら音で獲物の居場所を掴んでいるらしい。

光明が見えた。

音を立てないように足下のペットボトルを拾い、ヤツの向こう側へ投げた。
がらんがらんと転がったペットボトルの音に反応して、怪物が背を向ける。
その瞬間を逃すまいと、逆手に握ったナイフを振り上げ、力一杯刺した。
シュアアと、悲鳴らしき音を立てながら暴れるそれを、膝で押さえ込む。
水で濡れて滑る体表は、びっしりと細かい鱗に覆われていた。

背びれの脇に刺さったナイフを抜くと、青白い体液が流れ出てきた。赤い血さえ流れていないらしい。
おぞましさに鳥肌を立てながらも、それの首筋、エラのある部分にナイフを突き立てる。
首から先の動きを封じるためだ。爪もあったが、手足が短い分、それほどの驚異では無い。ひっかかれても無視をした。

首筋にナイフを突き立てられながらも、まだ生きているそれは、胴体と尾の部分をばたんばたんと動かして、脱出しようとしていた。
膝で押さえ込んでいると言っても、尾の先までは押さえきれない。
ばしばしと打たれる背が痛い。骨まで響くような痛みだ。

早く息の根を止めなければならない。

手の届く所にあった小ビンを、力一杯頭にたたきつけた。
鱗で滑って、ダメージはあまり無い。再び振り下ろしたが、今度は外れて地面に当たり、ビンが割れてしまった。
割れたビンの欠片は、生き物の牙のように尖っている。今度はそれをしっかりと持ち直し、力一杯頭部に振り下ろした。

モンスターの、声なき悲鳴が聞こえるかのような光景。

欠片で切ったらしく、赤い血が手からぽたぽたと垂れていた。
それには構わず、何度も何度もビンを振り下ろす。
白い体液と赤い血液が、混ざって気持ち悪い色になっていた。

ばしんばしんと打ち付けてくる尾の動きが完全に止まったとき、あたりは白く光る液体で、薄ぼんやりとしていた。
身体中についた液体が生臭い。
ふらふらしながらも立ち上がり、水で流そうと水際に立ったとき、自分の姿が水面に映った。
呆然と立ち尽くすその姿は、人間の形をしていた。

だが。

その肌は白く、うっすらと光を放っていた。
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