River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

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白い月と虚ろな少女

やっと、今日の学校が終わった。
初秋の風は冷たい。
少女は、こんなに晴れているのにな、と、白く虚ろな月が明瞭に見える空を恨めしげに見上げた。
マフラーをしっかりと巻き直し、ユリは自転車のペダルを踏む。
存在が虚ろでぼんやりした影でしかない夕月は、まるで今の自分のように思えた。
自然と下がっていく目線にも気付かず、ユリはすっかり考え込んでいた。
帰宅部の彼女が帰る時間帯は早い。
それでも、日暮れが早くなった今では、家に帰るまでに日が暮れるのは確実だ。
彼女はぼんやりしたまま、自転車を漕いでいた。
交差点の赤信号。気付かず危うく渡るところだった。
慌ててぎりぎりで自転車を止め、ため息を吐いた。
心の中、そのままのような冷たい風に、首をすくめた時、ふと道の色がおかしいことに気付いた。

紅。

濃灰色のはずのアスファルトが、真っ赤に光っていた。
その色の美しさに、ユリは目を奪われた。
ふと、道の先、緩い坂道を見上げると、その向こうには金の光が満ちていた。
目に痛いまでの明るい橙の光り。金と朱色のグラデーションを創る夕日。
それがあまりに眩しくて、目を細めた。
信号が青に変わる。
自転車を漕いで、坂道を上っていった。
紅に染まっているのは道だけでなかった。
道の傍に植えられた低木達。その葉先も真っ赤だ。
夕日に染められているのか、秋風に染められたのかはわからないけれど。
その美しい光景の中にいると、先程までは寂しいものにしか思えなかった肌寒い空気も、何故か優しく感じられた。
空気が澄み、空が高いこの季節に。
夕方の、30分にも満たない時間にしか見られない、天球に展開されるこの壮大なショウ。
紅と朱と、蒼と藍と。対照的な色達の織りなすグラデイション。
地上を染める太陽の断末魔がその手を伸ばして、ユリの目の前を通り過ぎていく。
坂の上で自転車を止め、振り返ると、虚ろだった月が白くはっきりとした実体を得ていた。
ユリは、その月に向かって微笑んだ。





なんでもない自然現象。その美しさに励まされる少女の話でした。
秋は本当にきれいな夕方ですよね。
「秋は夕暮れ」と清少納言も言ってますし。
昔から変わらずきれいな夕暮れが、この空には存在していたのでしょう。
でも、今の日本人はそれに気付いてない。
空を見上げることもないし、地平線を見ることも難しいから太陽が沈む瞬間なんて、海辺にでも行かなければ見られない(日本海側)。
ゆっくり自然の天体ショーを観賞する時間が欲しいものです。
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コメント

ほんとですね・・・。
自然を愛でる心の余裕が・・・。
しっかりしなくては、と、
思ってはいるんですけどねぇ。。。

  • 2007/10/26(金) 18:09:11 |
  • URL |
  • クローバー #-
  • [編集]

忙しさの中で、ふと立ち止まる一瞬があれば、と思います。
とりあえず、空を見上げてみましょうか。

  • 2007/10/27(土) 20:47:45 |
  • URL |
  • 裕 #-
  • [編集]

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