River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

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ホットミルクをふたつ


「落ち着いた?」
優しい声とともに、差し出されたマグ。中身はホットミルクだった。
さんざん泣いてしまった後だ。全身を虚脱感が支配し、声を出す気力もない。
こく、と頷いて、マグを受け取った。桜色と空色の、揃いのマグ。
去年プレゼントしたやつだ。使ってくれているのだと思うと、少し気持ちが暖かくなった。
白い湯気を立てているマグを、やけどをしないようにそっと持つ。暖かい。
「はい、毛布」
後ろから、ふわりと掛けられた毛布。暖かい。蚊の鳴くような声になってしまったが、ありがとうと礼を言った。ふわりと優しい微笑みが返ってきた。
「My pleasure」
この言い回しが気に入っているのだと、以前にも言っていた。
相手の為になることをするのが、感謝されるようなことをするのが、自分の喜びなのだと。
その利他の精神を馬鹿にしていた。けれど、今はそれに助けられている。
手の中のホットミルクは適温だ。お互いに猫舌なのを考慮してだろう。
そっとすする。甘い。ハチミツが入っているらしく、その香りがした。
じんわりと、体の中が暖まっていくのがわかる。
「だいじょうぶ」
そっと、背を撫でる手。ぬくもりが伝わってくる。目がじんわりと熱くなっていく。
「だいじょうぶだよ」
そっと囁く声。何が大丈夫なんだ、といういつもの憎まれ口は出て来なかった。
ただ、ああ、そうか。と。
だいじょうぶなのだと、訳もなく安心した。
そして、静かに泣きながら、暖かい眠りに落ちた。





「寝る前に5題」  WILD ROAD
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