River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このページのトップへ

友人は宇宙人 2

思考回路が理解不能。そんなヤツのことを、きみはなんて呼ぶ?「宇宙人かよ」って思わないか?
僕の友人は、まさにその「宇宙人」だった。あいつの思考回路はまったく常人には理解不能だ。
普段はノリのいい普通の人間のフリをしてるが、その実、めちゃくちゃおかしい脳みそを持っている。


心理系の授業の後、だったと思う。友人数人と食堂で昼食を食べている最中、あいつがぽつりと聞いてきた。
「自己肯定、ってなんだろうな?」
僕は最初、うまく漢字に直せなくて、こうていって何?と間抜けなことを聞いてしまった。
否定肯定の肯定、といわれて、あいつが自己否定自己肯定のことを聞いているとわかった。
「自分を肯定するってことだろ」
とあいつの隣に座ったヤツがコロッケをくわえながら言った。そのまんまだな。
「言葉の意味はわかるけどさ。それがどういう心情なのか、いまいち分からない。」
あいつは自分のロールキャベツを箸で突ついている。眉間に皺が寄ってるぞ。
「う~ん。自分はできるっていう、根拠のある自信をもつこと、とか」
「難しいよなあ。自分に自信があるとかじゃねえの。」
「自分が今いる立場を理解して、先を考えられること、とか?」
いいんじゃねえ?そんな感じそんな感じ、と同意があつまったところで、あいつが更に重たい疑問を持ってきた。
「じゃあ、今『いる』理由・・・生きている理由ってなんだ?」
僕らは顔を見合わせた。素っ頓狂なクエスチョンを持ち出してきた本人は、至って真剣らしい。つつきまくったロールキャベツはすでにキャベツとミンチだ。
生きている理由、といわれても、そんなこと考えたこともない。僕は逆に、おまえはどうなんだ、と聞き返してしまった。
あいつが宇宙人だ、ということをすっかり忘れていた。聞いたことを後悔したのは答えを聞いた後だ。
「死ぬ理由がないから」
あいつはばらばらのロールキャベツをもそもそと口に運びながら言った。代わりに、全員の箸が止まる。
「生きているのも迷惑かけるが、死んでも迷惑かけるし。惰性?」
こともなげに言ったあいつに、果敢にも僕の隣から反論が出た。
「おまえ、教師になりたいって言ってたジャンか。それは生きる理由じゃないのかよ?」
「ちょっと違う。迷惑掛けっぱなしなのは心苦しい。だから何か誰かの役に立ちたい。頭脳労働専門の自分にできることで、一番分かりやすく人のためになること、が教師だっただけだ」
ごちそうさま、と手をあわせて、図書館にいくから、と先に席をたった。立つ鳥、後を濁しまくっていきやがったな。
まったく何を考えているのか。自殺願望があるわけでもなく、将来の夢もある。その夢を、叶えられるだけの能力もある。なのに、何が不満なんだろう?
呆気にとられていた友人達の、なんなんだあいつ、超へんなやつ、あんな根暗だったっけ、と言う会話に、僕はため息と共に呟いた。


「たぶん、別の次元にいるんだろ」

スポンサーサイト
このページのトップへ

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://chiro129.blog117.fc2.com/tb.php/43-8efd1ce5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
このページのトップへ

FC2Ad

FC2カウンター

最近の記事

カテゴリー

プロフィール

裕

Author:裕
微病弱・酒煙草苦手・甘味党・文系新米教師。
日常的に脳みその中で言葉をこねくり回しています。

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。