River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このページのトップへ

友人は宇宙人 3

宗教の勧誘、って受けたことがあるだろうか。大学に通っていると、その周辺で新興宗教の勧誘に出逢うことも少なくない。
そういうのって大抵金をむしり取るようなタイプの奴らなので、僕は「浄土宗です」といって断ることにしている。(嘘じゃない。だって先祖代々の墓があるのは浄土宗の寺だ)
結構「信じ込んじゃってる人」っていうのは違う世界に生きてるんじゃないかってくらい価値観が違うことが多いので、会話するのも避ける。
けれど、あいつのはちょっと怖かった。

たまに互いの部屋で呑むことがある。その時は、贔屓にしているお笑い番組のDVDを見るって名目で、飲み会をやった。
あいつも結構のんでたので、ちょっと酔ってたと思う。
ぴんぽん、とチャイムが鳴らされ、家主のあいつが応対に出た。ワンルームなので玄関の様子も丸わかりだ。
僕はビールを傾けながら、DVDの感想をもうひとりの友人に語られていた。ふと耳に入ったのは、女性の声。
「・・・信じれば・・・救われます・・・」
よく来る宗教の勧誘か、と思ってもうひとりをつつき、注意を向けさせた。あいつがどう断るのかちょっと興味がある。
「救われたいとは思いません」
きっぱりとした声が聞こえた。
「世界が滅ぶというのは人間が滅ぶということと同義では無いでしょう。人間が滅んでも地球は残るでしょうから。」
多分勧誘のおばちゃんは絶句している。あーあ、可哀相に。あいつの「宇宙人」なところがでちゃったから・・・。
「地球にしてみれば、人間が滅んでくれたほうがいいくらいでしょう。人間がいるから地球環境は悪くなるし、宇宙にデブリは増えるし、戦争だのなんだので破壊ばかり。他の動物と違って採取したものを還元することもない。」
「それは、植樹とか動物保護とか・・・」
「気休めにしかなりません、人間の消費する量に比べたらね。動物保護なんて、少なくしたのはそもそも人間でしょう」
立て板に水。ちょっとどころじゃなく酔ってるかもしれない。なんてタチの悪い酔い方をするんだ、あいつは。でもちょっと面白い。
「そもそも人間という生き物は、何かに迷惑を掛けないと生きていけない。しかもそれを反省しない。繰り返す。
そんな生き物、滅んでしまった方が他の、人間なんかよりずっとたくさんの生き物たちのためだ」
いかにも傲慢そうな感じに言い放った。僕らは小さく笑う。おばちゃんのヒステリックな声が聞こえてきた。
「あ、あなたは、自分が死んでも良いというのですか!?」
「構いませんよ」
すごいことを言っている、と思った。勧誘が鬱陶しいからといってそこまで言うか。
「自分が生き残る理由がありませんから。僕は自分が、不可抗力で死ぬことを望んでいるんです」
世界が今すぐ滅んでくれるのなら、僕が死んだと言って悲しんだり迷惑を被ったりする人もいないでしょうからね。万々歳ですよ。
そんな壮大な自殺願望を語って勧誘を追い払ったあいつは、戻ってくると泡の消えかけたビールに手をつけた。僕らが聞いていたと思っていないのか、先程の話には全く触れてこない。
「なあ、今のってまさかマジじゃないよな?」
まさかなあ、と思いつつも、僕は否定しきれなかった。なにしろ「宇宙人」だ。計り知れない思考の持ち主。
聞いてたんだ?と笑ったあいつは、しれっとした顔で、薄ら寒いことをこともなげに言った。


「もちろん、全部本気さ」


スポンサーサイト
このページのトップへ

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://chiro129.blog117.fc2.com/tb.php/44-b0db0f68
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
このページのトップへ

FC2Ad

FC2カウンター

最近の記事

カテゴリー

プロフィール

裕

Author:裕
微病弱・酒煙草苦手・甘味党・文系新米教師。
日常的に脳みその中で言葉をこねくり回しています。

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。