River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

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雨の音

雨の音が聞こえる。

真っ暗だった。
私がいるところは、狭苦しい部屋のようだった。
寒い。そして痛い。
下は冷たくて硬い。手を触れるとざらざらとしていた。
どうやらコンクリート・・・それも、質は良くない。もしくは古いのだろうか。
このまま寝転がっていては体温を奪われる。
なんとか起き上がろうとして、体を拘束するものに動きを阻まれた。
手首。
背中側に回された両手が、金属製のなにかで繋がれていると言うことは、じゃらじゃらという金属音でわかった。
手錠だろうか。
だとすれば、わたしは何か罪を犯したのだろうか?
記憶を探ってみるが、思い当たるところはない。後頭部ががんがんと痛みを訴えた。
ぐっと腹筋に力をこめて体を起こす。
ようやく目が暗闇になれてきたのか、ぼんやりと部屋の様子が見えてきた。
床も壁もコンクリートの、四角い部屋。段ボール箱がいくつか隅に積まれている。
立ち上がっても手を伸ばしても届かないくらい高いところにひとつ、窓があった。
鉄格子付き、人間の頭くらいの大きさ。
窒息死とガス中毒死の心配はないようだが、窓からの脱出は不可能のようだ。
しかし寒い。
吹き込んできた冷たい夜風に、わたしは身を震わせた。
外は雨の音が響いている。その上夜ならば、当然冷え込みも厳しい。
服装は防寒になど役に立ちそうもないスーツ姿だ。靴は革靴。
キックの威力は増すだろうが、ロッククライミングや全力疾走には向かない装備だ。
立ち上がり、軽くジャンプしたり繋がれた手を何とか回して触れてみたりしたが、ポケットの中身は何もないようだった。小銭のじゃらじゃら言う音も、携帯電話の重さも感じない。
持ち物は没収されたのだろうか?
一体何者が、何の目的でここに閉じこめているのだろうか。
わたしは誰かに恨みを買っていたのだろうか?
考えてもわからなかった。
なにしろ、自分が誰かすら、記憶にないのだ。
後頭部がずきずきする。どうやら殴られたらしかった。
そのショックで記憶を失ったのだろうか?
疑問は尽きなかった。
ざあざあと雨は降っている。この様子では、叫んだところで大して聞こえないだろう。
窓から雨が吹き込んでこないのが、救いと言えば救いだった。


雨は変わらず降っていた。
むしろ、その勢いを増しているように思われた。
防寒のために役にたつものはないかと、隅に積まれた段ボールを蹴り倒してみると、中身は空だったり、お菓子の空き袋だったり、重すぎてひっくり返せなかったりした。
私をここに閉じこめた何者かが、これらの段ボールをここに運び込んだのだろうか?
それとも、偶然ここに元からあっただけなのだろうか。
食物も衣類も見つからなかったので、仕方なく段ボールを一枚敷き、もう一枚を被るようにして身を縮こまらせた。
先程の、コンクリートに直に横たわった状態と比べればぐっとマシである。
窓を見上げたが、雨雲が厚く空を覆っているのだろう。月も星も見えなかった。
寒さと雨の音で、眠れやしない。
朝、早く来い。雨、早く止め。
誰か、誰でもいいから、ここに来てくれ。
小さく呟いた声は、雨音にかき消されて自分にすら聞こえなかった。
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日常的に脳みその中で言葉をこねくり回しています。

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