River in the Morning

川面にたちこめる朝靄。色が失せ、グレイに染まる風景。 心の原風景のひとつ。そんなものに、私はなりたい。

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こっちにおいで

真夜中だった。
私はぐっすりと眠っていた。
普段から私は寝付きがいい。そして、一度寝付いたら何者をも私の眠りを妨げる事は出来ない。
同居人はいつも、寝穢いと評するが、それは違う。
睡眠は私の健康と精神の安定のために重要な要素なのだ。
そんな私が、その夜は目が覚めてしまった。こんな事は滅多にない。
自らの寝床から体を起こすと、私を起こした原因が見えた。
同居人は、私の寝床の横、自分の寝床に眠っている。
いびきを掻く事もなく静かに眠っている事が多いのだが、今夜は声を出していた。
その声がなんとも苦しそうで、私は心配になった。
どうしたのだろうか。何か、体の上に乗っているのか。
音を立てずに寝床から抜け出し、同居人の枕元へと近寄った。
同居人は眉間に皺を寄せ、なんとも苦しそうな表情をしている。
どうやら夢見が悪い様だ。どうしたものだろうか。
こくりと首を傾げた。
困った。
私はこのような時どうしたらよいのか?起こした方がよいのだろうか。
同居人も私同様眠っている途中で起こされる事を嫌う。
しかしこれほど苦しそうならば、それから脱出させてやった方がよいのかも知れない。
それにこのまま唸らせたままでは、私の安眠が妨害されてしまう。
うむ、起こそう。
決めたらすぐに行動だ。
私は同居人の頬に流れている水・・・涙を拭い、頬を叩いてやった。
同時にそうっと呼びかける。夜中にうるさくすると怒られるからな。
何度か繰り返すと、同居人の目が開いた。起きたらしい。
ぼうっとしたままの目で、こちらを向いた。そして微笑んだ。
同居人はたまにこの顔をする。
たとえば私が数日出かけて帰ってきたとき。
帰ってきた同居人を出迎えたとき。
情けなく泣きそうでしかも嬉しそうな。
布団の中にあったはずなのに冷たい手が、私の頭を撫でた。
微かに震えている。
「こっちに、おいで?」
開けられたすきまに、大人しく入った。
私はひとと共に眠るのは好かないのだが、今日は特別だ。
まったく手の焼ける。
私を抱き込むようにして、同居人はすぅっと寝入っていった。
今度は魘されてはいないようだ。
よかった。
これで私もゆっくりと眠れるというものだ。






目が覚めたとき、私はびっくりした。
普段は自分の寝床にいて呼んでも絶対来てくれない右衛門が、私のベッドにいたからだ。
どうして、と思って、そのあとに思い出した。
夜中に、悪夢に魘されていた私を、右衛門が起こしてくれたこと。
そのあと一緒に眠ってくれたのだ。おかげで、そのあとは夢も見ずにぐっすり眠れた。
「ありがとう、右衛門」
そっと背を撫でると、右衛門がぱちりと目を開けた。
茶色のアーモンドの瞳がこちらをじっと見つめる。
しかしすぐに興味を失った様に目線を外し、いつものようにぐぐっと伸びをすると、ベッドを降りてさっさと寝室を出て行った。
「ありがとう」
その背中にもう一度お礼を言うと、右衛門はちょっと立ち止まってこちらを振り向いた。
「にゃあ」
面倒くさそうな泣き声を残して行ってしまった飼い猫に、私は大好物のかまぼこを買ってきてあげようと思った。

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雨の音

雨の音が聞こえる。

真っ暗だった。
私がいるところは、狭苦しい部屋のようだった。
寒い。そして痛い。
下は冷たくて硬い。手を触れるとざらざらとしていた。
どうやらコンクリート・・・それも、質は良くない。もしくは古いのだろうか。
このまま寝転がっていては体温を奪われる。
なんとか起き上がろうとして、体を拘束するものに動きを阻まれた。
手首。
背中側に回された両手が、金属製のなにかで繋がれていると言うことは、じゃらじゃらという金属音でわかった。
手錠だろうか。
だとすれば、わたしは何か罪を犯したのだろうか?
記憶を探ってみるが、思い当たるところはない。後頭部ががんがんと痛みを訴えた。
ぐっと腹筋に力をこめて体を起こす。
ようやく目が暗闇になれてきたのか、ぼんやりと部屋の様子が見えてきた。
床も壁もコンクリートの、四角い部屋。段ボール箱がいくつか隅に積まれている。
立ち上がっても手を伸ばしても届かないくらい高いところにひとつ、窓があった。
鉄格子付き、人間の頭くらいの大きさ。
窒息死とガス中毒死の心配はないようだが、窓からの脱出は不可能のようだ。
しかし寒い。
吹き込んできた冷たい夜風に、わたしは身を震わせた。
外は雨の音が響いている。その上夜ならば、当然冷え込みも厳しい。
服装は防寒になど役に立ちそうもないスーツ姿だ。靴は革靴。
キックの威力は増すだろうが、ロッククライミングや全力疾走には向かない装備だ。
立ち上がり、軽くジャンプしたり繋がれた手を何とか回して触れてみたりしたが、ポケットの中身は何もないようだった。小銭のじゃらじゃら言う音も、携帯電話の重さも感じない。
持ち物は没収されたのだろうか?
一体何者が、何の目的でここに閉じこめているのだろうか。
わたしは誰かに恨みを買っていたのだろうか?
考えてもわからなかった。
なにしろ、自分が誰かすら、記憶にないのだ。
後頭部がずきずきする。どうやら殴られたらしかった。
そのショックで記憶を失ったのだろうか?
疑問は尽きなかった。
ざあざあと雨は降っている。この様子では、叫んだところで大して聞こえないだろう。
窓から雨が吹き込んでこないのが、救いと言えば救いだった。


雨は変わらず降っていた。
むしろ、その勢いを増しているように思われた。
防寒のために役にたつものはないかと、隅に積まれた段ボールを蹴り倒してみると、中身は空だったり、お菓子の空き袋だったり、重すぎてひっくり返せなかったりした。
私をここに閉じこめた何者かが、これらの段ボールをここに運び込んだのだろうか?
それとも、偶然ここに元からあっただけなのだろうか。
食物も衣類も見つからなかったので、仕方なく段ボールを一枚敷き、もう一枚を被るようにして身を縮こまらせた。
先程の、コンクリートに直に横たわった状態と比べればぐっとマシである。
窓を見上げたが、雨雲が厚く空を覆っているのだろう。月も星も見えなかった。
寒さと雨の音で、眠れやしない。
朝、早く来い。雨、早く止め。
誰か、誰でもいいから、ここに来てくれ。
小さく呟いた声は、雨音にかき消されて自分にすら聞こえなかった。
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白に込めた祈り

思いを込めたチョコレートがやりとりされる、2月のイベント。
チョコレート会社の陰謀とも、想いを秘めた女性が勇気を出せる日ともいわれる日。
そんな日に、俺はチョコを貰った。
相手は、今までずーっと毎年毎年チョコをくれてた、隣の家の住人。
幼稚園から高校までずっと一緒の、所謂幼なじみってやつだ。
でも、今まで義理だと思ってたしあいつもそう言ってた。
今年は、朝家の前で合った瞬間からなんだか様子がおかしかった。
そわそわしてて、今までだったら朝イチでぽんとくれたのに、『放課後にね』っていってて。
もしかしたら、本命が出来て、そいつに告白すんのかななんて思ってたんだ。
赤ん坊の頃から一緒にいる相手だし、ほとんど姉弟みたいなもんだったから、素直に応援する気だったんだ。
といっても、それを言うのも・・・面倒くさくて、口には出さなかったけど。
・・・今思うと、言わなくて良かったのかもしれない。
放課後、家にあいつが来て。なんか、近所の公園まで呼び出されて。
そこで、言われたんだ。

『好き。今まで見たく幼なじみの友達っていうんじゃなくて、恋人として付き合って』



「・・・おまえ、それ惚気?それとも自慢か?」
「俺がそんな面倒な事するわけないだろ。相談してんだよ」
3月。3年にもなれば色々忙しいんだろうが、俺たち1年にとってはそうでもないので放課後はヒマがある。
美術部の俺は部活に出ていたが、極度の面倒くさがりで部活も名目だけの美術部員のあいつがめずらしく美術室に来たと思ったら、こんな話をされた。
ちくしょう。それは義理でもほぼ貰えない俺に対する遠回しなイジメか。
「で、返事は」
ぶっきらぼうになったのはまあ、こいつは気にしないからいいや。あ、でもデッサンが雑になったかもしれない。う~ん、この辺はもう少し書き込んだ方が良いか。
「そういう風に考えた事ないっていったら、ホワイトデーでいいからって言われた・・・」
なるほど。それで、そろそろ返事しないといけないから、悩んでるのか。
「しっかし、朝とか気まずくなりそうだなそれ」
「あいつ陸上部だから朝練あるし、会ってもいつも通りだったぞ」
それはいいのか悪いのか・・・いや、でもあいつが恥らってんのも想像できない。
なんつーか、姉御気質?江戸っ子?そんなノリのやつだしな。
「おまえ、あいつのこと嫌いなの好きなの」
「嫌いじゃねーけどさ」
ぶっすー、と膨れている。キモイ、とちゃかして、鉛筆をおいた。石膏デッサンはやりすぎると線が黒くなりすぎてだめだ。どちらかというと、油絵の方がごてごて色をのっけられて好きなんだよな。
「じゃ付き合っちゃえば」
「・・・」
難しい顔してんな。おまえ、面倒だからって理由で断んなよ?
「それは、なんか泣かれそうだから」
「え、あいつ泣くの」
思わず振り向いた。石膏像がぐらついてひやりとしたが、大丈夫そうだ。あぶねー。
「最近はそうでもないけど、結構涙もろい」
「さっすが幼なじみ。よく知ってんじゃん」
手に付いた黒を、石けんで落とす。春とはいえまだ冷たい。その水音に紛れそうな小さな声で呟くのが聞こえた。
「つーか俺、あいつが泣くの苦手なんだよな」
それは、おまえもあいつのこと、割と好きだって事なんじゃないのか。
思ったけど、言わないでおいた。代わりにこういってやる。
「一ヶ月悩んじゃうくらいなんだから、まんざらでもないんだろ。付き合ってみてから考えれば?」
まだ納得しかねる様な表情だったが、そうする、と言って荷物を持った。
片づけも終わったので、俺も荷物を背負う。
「んじゃ、ホワイトデーのお返しでも買いに行くか」
「あれ、お前も貰ってんだ」
「姉貴からだけどな」
ガラにもなく恋のキューピッドなんかやる気になったのは、隣のこの男がまあ、大事な友達ってヤツだからで。
姉貴の惚気交じりの愚痴で、女が喜びそうな返事の仕方はまあ分かる。
面倒くさがりで鈍くて、空気とか読めないヤツだけど。
親友のシアワセのために、一肌脱いでやりましょう。



白に込めた祈り


数日後、マシュマロをプレゼントして付き合いだしたらしいので、彼女の方に会ったときにおしあわせにと言ったら、キューピッド役ありがとうと言われた。筒抜けかよと思ったら、これからちゃんと好きだって言わせるから、協力しろと言われた。女の癖になんて男前な。面白そうだからやるけどな。そのかわり俺にも女の子紹介してくれよ。
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Flaver OF Life

ちょっとぐろいかもしれないです。バトルロワイアルが見られない人は見ない方がよいかと。


【“Flaver OF Life”の続きを読む】
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友人は宇宙人 3

宗教の勧誘、って受けたことがあるだろうか。大学に通っていると、その周辺で新興宗教の勧誘に出逢うことも少なくない。
そういうのって大抵金をむしり取るようなタイプの奴らなので、僕は「浄土宗です」といって断ることにしている。(嘘じゃない。だって先祖代々の墓があるのは浄土宗の寺だ)
結構「信じ込んじゃってる人」っていうのは違う世界に生きてるんじゃないかってくらい価値観が違うことが多いので、会話するのも避ける。
けれど、あいつのはちょっと怖かった。

たまに互いの部屋で呑むことがある。その時は、贔屓にしているお笑い番組のDVDを見るって名目で、飲み会をやった。
あいつも結構のんでたので、ちょっと酔ってたと思う。
ぴんぽん、とチャイムが鳴らされ、家主のあいつが応対に出た。ワンルームなので玄関の様子も丸わかりだ。
僕はビールを傾けながら、DVDの感想をもうひとりの友人に語られていた。ふと耳に入ったのは、女性の声。
「・・・信じれば・・・救われます・・・」
よく来る宗教の勧誘か、と思ってもうひとりをつつき、注意を向けさせた。あいつがどう断るのかちょっと興味がある。
「救われたいとは思いません」
きっぱりとした声が聞こえた。
「世界が滅ぶというのは人間が滅ぶということと同義では無いでしょう。人間が滅んでも地球は残るでしょうから。」
多分勧誘のおばちゃんは絶句している。あーあ、可哀相に。あいつの「宇宙人」なところがでちゃったから・・・。
「地球にしてみれば、人間が滅んでくれたほうがいいくらいでしょう。人間がいるから地球環境は悪くなるし、宇宙にデブリは増えるし、戦争だのなんだので破壊ばかり。他の動物と違って採取したものを還元することもない。」
「それは、植樹とか動物保護とか・・・」
「気休めにしかなりません、人間の消費する量に比べたらね。動物保護なんて、少なくしたのはそもそも人間でしょう」
立て板に水。ちょっとどころじゃなく酔ってるかもしれない。なんてタチの悪い酔い方をするんだ、あいつは。でもちょっと面白い。
「そもそも人間という生き物は、何かに迷惑を掛けないと生きていけない。しかもそれを反省しない。繰り返す。
そんな生き物、滅んでしまった方が他の、人間なんかよりずっとたくさんの生き物たちのためだ」
いかにも傲慢そうな感じに言い放った。僕らは小さく笑う。おばちゃんのヒステリックな声が聞こえてきた。
「あ、あなたは、自分が死んでも良いというのですか!?」
「構いませんよ」
すごいことを言っている、と思った。勧誘が鬱陶しいからといってそこまで言うか。
「自分が生き残る理由がありませんから。僕は自分が、不可抗力で死ぬことを望んでいるんです」
世界が今すぐ滅んでくれるのなら、僕が死んだと言って悲しんだり迷惑を被ったりする人もいないでしょうからね。万々歳ですよ。
そんな壮大な自殺願望を語って勧誘を追い払ったあいつは、戻ってくると泡の消えかけたビールに手をつけた。僕らが聞いていたと思っていないのか、先程の話には全く触れてこない。
「なあ、今のってまさかマジじゃないよな?」
まさかなあ、と思いつつも、僕は否定しきれなかった。なにしろ「宇宙人」だ。計り知れない思考の持ち主。
聞いてたんだ?と笑ったあいつは、しれっとした顔で、薄ら寒いことをこともなげに言った。


「もちろん、全部本気さ」


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微病弱・酒煙草苦手・甘味党・文系新米教師。
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